薬学部シラバス2024

医療情報学(医療Dxを安全に実現するための知恵)
Medical informatics (Secure Realization of Medical Digital Transformation)

 1年 後期 (選択)一般教養 1単位
倉田 香織

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授業の目的(ねらい)

病院や診療所、薬局などの医療提供施設で取り扱われる医療情報は多岐にわたる。本講義では、医療DXを安全に実現するための知恵として、1)医療情報の特徴と医療情報システム、2)薬剤関連業務における情報システムの利活用、3)医療情報システムを効果的に使用するための方法、の3つの観点かこれを学んでいく。さらに、情報とは何かを理解し、情報を管理・活用するためのコンピュータを使いこなす能力(コンピュータリテラシー)とインターネットを使いこなす能力(インターネットリテラシー)について、歴史的変遷を踏まえながら、ネット社会の成立と社会の情報化がもたらす社会システムの変化および個人の活動への影響を理解する。

学修到達目標

1)生命・医療に係る倫理観を身に付け、医療人としての感性を養い、様々な倫理的問題や倫理的
状況において主体的に判断し、プロフェッショナルとして行動する。
2)患者・生活者の心理、立場、環境、状態に配慮し、非言語コミュニケーションを含めて適切な
コミュニケーションを図り、良好な人間関係を構築する。
3)デジタル技術の利活用に係る課題について理解を深め、デジタル技術に係る倫理・法律・制
度・規範を遵守して、環境や状況に応じ適切な判断に基づいて利活用する重要性を認識する。
4)医療における患者情報のデジタル化や、その取扱いについて説明する。
5)情報化社会における情報のあり方を社会的背景と文化的背景をふまえて説明できる。
6)コンピューターを構成する基本的装置の機能と接続方法を説明できる。
7)コンピュータの取り扱う文字と文字の符号化を説明できる。
8)ネットワークを構成する基本的な装置とサーバ、プロトコルの役割を説明できる。
9)ネットワークセキュリティー(脅威とその予防策)について概説できる。
10)社会でおきている変化とAIの活用領域について事例を列挙して説明できる。
11)医療における情報の収集と活用を目的としたデータベースの特徴と活用について説明できる。
12)適切なデータデースを用いて情報を収集し、調査レポートを適切な形式で作成できる。
13)知的財産権の中の特許権について、医薬品、特に後発医薬品に関わる事例を説明できる。
14)知的財産権の中の著作権について説明できる。
15)医療現場で用いる情報および個人情報の保護について概説できる。
16)デジタル情報を扱う上での留意事項とデータを守る上での留意事項に配慮する。
17)代表的な構造化文書の名称と特徴を説明できる。
18)医療情報の標準化に関わるコード体系および情報交換プロトコルを概説できる。
19)情報化社会における暗号による秘匿と認証の必要性を説明できる。
20)医療安全のためのデザイン(マンマシンインタフェイスやアフォーダンス)について概説できる。
21)医薬品が関わる代表的な医療過誤やインシデントの原因と防止策を、デザインと、防衛や集団の中の人間関係の観点から説明できる。
22)情報のデジタル化がもたらす社会および個人への影響をふまえ、倫理規範や法令に則した行動をとる。
23)情報化社会において必要不可欠な知識を身につけ、より良いコミュニケーションを実践する。
24)薬学が総合科学であることを認識し、薬剤師の役割と学習内容を関連づける。

授業概要

次の項目について、講義を行う。
1)医療人に必要な情報リテラシー
2)AI技術とデータサイエンス
3)医療情報の特徴と個人情報保護に基づく倫理的配慮
4)コード化や標準化、構造化といった施設を跨いだ形でシステムを構築する際に有効な技術
5)患者の治療を目的とした1次的な利用から、集積された情報を2次的に活用するためのシステム
6)日本で進められてる医療政策

授業計画

回数 担当 内容 コアカリとの
関連コード
1 倉田 情報リテラシーの概念
(情報社会の到来、情報とは何か、コミュニケーションとは何か)
B-1-1-1~3,8 B-1-2-11 T-1-1-1
2 PCやインターネットのしくみと特徴
(PCの5大装置とインタフェイス、ネットワークの仕組み)
B-5-2-1 T-1-1-1
3 データ表現と文字コード
(日本語の文字コードと文字による表現)
B-5-2-1 T-1-1-1
4 AI技術とデータサイエンス
(AIとは何か、医療情報システムとビッグデータ)
B-5-1-4 B-5-2-3~5 T-1-1-1
5 情報化社会と法律
(知的財産法における特許権と著作権、引用と転載、個人情報の取り扱い)
B-1-2-6 B-1-3-4~5 B-5-2-1 D-3-5-4 T-1-1-1
6 医療情報の標準化と構造化文書
(医療現場で用いるコード体系とその応用)
D-3-5-3,5 T-1-1-1
7 情報化社会における認証と秘匿
(公開鍵暗号方式とオンライン時代の認証技術)
D-3-5-4 T-1-1-1
8 情報デザインとユーザビリティー
(医療安全のためのデザイン、アフォーダンスと価値観の内面化、ユニバーサルデザイン)
T-1-1-1
9 医療政策について学ぶ T-1-1-1

授業で行っている工夫(アクティブラーニング、思考力・判断力・表現力の向上に向けた取り組み)

 「最終目標」と「章末課題」を教科書の各章のカバー頁に掲載しました。世の中の問題の多くは、情報学の知識だけで解決することはできませんが、知識があることで、第一歩を踏み出すことが可能です。毎回の授業後に、知識の確認を行っていきますが、単なる知識で終わることのないよう、全講義テーマの中から2〜3編を選び、レポートを作成していただきます。レポートの作成を通して、思考力・判断力・表現力の向上につながるようにしたいと思います。
 講義用に教科書「医療情報リテラシー」を編纂し、各章ごとに要点をまとめたPowerPointマテリアル(音声付き)を補助資料として、講義を行います。予習を行う前に、次の講義回のテーマについて、各自の理解度や学びたいことを明確にするための設問を用意します。また、授業後も同様に、理解度を確認するための設問を用意します。リアクションペーパーを兼ねた記述欄も設けますので、各自の振り返りに役立ててください。
設問の具体的な説明は、準備学習(予習・復習等)欄の「復習」に記載します。

成績評価方法

<試験・レポート課題により評価する>
1)形成的評価 
 a)知識:講義回毎に、WebClassを用いてチェックテスト(記述回答あり)を行う。
 b)態度:講義回毎に、WebClassを用いてチェックテスト(記述回答あり)を行う。
2)総括的評価 
 a) 知識:単位認定課題(レポート)(10%)、定期試験(70%)にて評価する。
 b) 態度:情報科学・情報社会に対する姿勢を含め、ルーブリック評価表を用いて評価する(20%)。
a)およびb)を加算して総合的に評価する。ただし、単位認定課題の未提出者に対しては、受験停止の措置を講ずることがあるので注意すること。

教科書

医療情報リテラシー 講義編
(土橋 朗編 著者 土橋 朗/小杉義幸/佐藤弘人/倉田香織、政光プリプラン)

参考書

医療情報 情報処理技術編/医学医療編/医療情報システム編(日本医療情報学会編)
IT Text情報リテラシー(オーム社)

オフィスアワー

倉田 香織 情報教育研究センター DR棟4階 センター教員室
質問等はいつでも可。ただし、席を不在にしていることも多いので予約をしてください。 (予約はメールで可能、質問や相談はZoomでも可能)

準備学習(予習・復習等)

予習:講義前に必ず、教科書の講義関連部分を読んでおくこと。
 毎回10頁程度、20分程度。聞き慣れない言葉や概念が多いので、声に出して読むことをおすすめします。
復習:各講義回後にWebClassに掲載される課題を実施すること。
 課題は3つあります。毎回20分程度。講義内容を振り返りましょう。
 問題が解けることを確認すること。
 さらに、現在の社会の仕組みを「情報学」の知識を使って「自分なりに」理解して説明を試みましょう
 【設問1】講義への理解度を確認しましょう
 【設問2】講義後に、改めて考えてみましょう
 【設問3】次の講義での話題について、考えてみましょう

学生へのフィードバック

WebClassに掲載された課題への受講生の回答については、適宜、集計し、講義の中で解説を加えていきます。講義時間内に紹介しきれない部分については、WebClass内の掲示版機能等を使って、意見交換や、補足説明を行います。

備考

情報学の講義に出てくる用語は難しいと感じる学生さんも多いことでしょう。美しい花を見るのに、その花の名前を知る必要はないのかもしれません。それでも、知識は人を豊かにします。現在、当たり前に使っている技術やサービスの背景を知ることで、問題をどのように解決してきたのか、そして、どのような問題が生まれていくのかについて学んでいきましょう。
授業は「情報とは何か」「コミュニケーションとは何か」から始めます。情報は無形物であり、表現形式があり、媒体と組み合わせて認識されます。ビット列で表現される「データ」が、パソコンという媒体を介して「情報」となり、多くの人の経験によって「知識」に昇華され、蓄積されます。「情報」を「知識」にしていく過程ではコミュニケーションが欠かせません。良いコミュニケーションに必要なものは「データ」ではなく「情報」や「知識」です。コンピュータは「個人」の能力を拡大し、コミュニケーションは「社会」の能力をを拡大します。薬剤師をめざすみなさんと情報学を学ぶ目的は、医療現場におけるこうした情報のあり方を正しく理解することにあります。そうした広い視野の中で、薬剤師として業務に活用することになる、医療情報システムのあり方を理解することが、みなさんの専門性をより有効に活かすための環境を生み出すことにつながります。選択科目に変更になりましたが、医学部では医療情報を扱うシステムを学ための「医療情報学」は必修科目です。WebClassの会議室は開講期間中いつでも開いています。直接的な会議室への質問を歓迎します。

ナンバリングコード

EJ11203

授業計画の見方・注意

①行動目標(内容)

…科目毎に設定された本学独自の行動目標が記載されている。

②行動目標(コアカリとの関連コード)

…本学の行動目標とモデル・コアカリキュラムとの関連をコード化して記載している。
 コードの具体的な内容は、画面右上の「コアカリとの関連コード一覧」をクリックすると確認することができる。

授業計画の見方・注意の見本シラバス

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