薬学部シラバス2024

基礎統計学
Basic Statistics

 2年 前期 2年必修科目 1単位
片野 修一郎

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学習目標(GIO)

薬学を学び、さらに薬学データの解析をする上で必要なデータ処理の基礎概念と統計データの解析方法を学ぶ。方法論の羅列とその丸暗記というありがちな事態に陥らないように、基本概念をしっかり理解することをまず目標とした上で、薬学で実践できる統計的手法を我がものとする。

行動目標(SBOs)

番号 内容 コアカリとの関連コード
1 母集団と標本の違いを理解する。特に、無限母集団の場合にそれらが説明でき、標本抽出の意味がわかる。 X-7-5-5
2 データを度数分布表などの表にまとめ、ヒストグラムなどのグラフに表現できる。 X-7-5-2
3 代表値(平均値、中央値、最頻値)、散布度(範囲、4分偏差、分散、標準偏差)の意味および定義式について説明できる。それらを実際に計算して求められる。 E3-1-5-1 X-7-5-3
4 単なるデータの分布と確率分布の違いがわかる。確率分布の代表例をいくつか挙げられる。特に、最も重要な正規分布の特性について説明でき、正規分布表が正しく読みこなせる。 E3-1-5-3
5 確率分布の母数の点推定の意味がわかる。標本の分散、不偏分散、標準偏差、不偏標準偏差の定義を説明でき、それらの関係式を用いて具体的に求められる。 E3-1-5-1 X-7-5-3
6 標本平均の分布の特徴を、中心極限定理などを用いて説明できる。 E3-1-5-3 X-7-5-5
7 母平均を、正規分布やt分布を正しく使い分けて、標本から区間推定できる。 E3-1-5-1 X-7-4-2 X-7-5-5 Y-5-5-3
8 母比率の分布の特徴を説明でき、それを標本から区間推定できる。 E3-1-5-1,3 X-7-4-2 X-7-5-5 Y-5-5-3
9 母分散を、カイ2乗分布を用いて、標本から区間推定できる。 E3-1-5-3 X-7-4-2 X-7-5-5 Y-5-5-3
10 検定における基本的な考え方を、帰無仮説と対立仮説、第1種と第2種の誤り、第1種の誤りと有意水準(危険率)などに関連させて説明できる。 E3-1-5-2 X-7-5-6
11 2つのグループの平均値や比率の違いを、正規分布やt分布を正しく使い分けて、検定できる。 E3-1-5-2,5 X-7-5-6
12 2つのグループの分散の違いを、F分布を用いて検定できる。 E3-1-5-2~3
13 データの独立性や適合度を、カイ2乗分布を用いて検定できる。パラメトリック検定、ノンパラメトリック検定の意味についても触れる。 E3-1-5-4

授業内容

回数 担当 内容 対応(SBOs)
1,2 片野 データ分布の代表値と散布度の意味・意義・定義を理解して計算する。 2,3
3,4 単なるデータ分布と確率分布の違いを理解し、典型的な確率分布としての正規分布に馴染む。母集団と標本の峻別について。確率分布の平均・分散・標準偏差の定義。 1,4,5
5,6 標本平均はどのような分布になるか(中心極限定理)。母集団の平均値、分散、標準偏差を標本から点推定する(不偏分散と標本分散の違い)。 5,6
7~9 区間推定の考え方とその実行。母集団の平均値・比率・分散などを標本から区間推定する。 7,8,9
10~12 仮説検定とは何か。母平均・母分散・母比率あるいはそれらの差や違いの検定。 10,11,12
13 独立性、適合度の検定。母集団分布が不明なときの検定(ノンパラメトリック検定)。 13

アクティブ・ラーニングの取り組み

・授業中に学生自ら手を動かして演習問題を解く機会をできるだけ設けたいと考えている。
・WebClass上に、自習用の演習問題を、解答解説と共に適宜アップする予定である。
・可能ならば、授業中に演習問題の発表機会も与えたい。

授業で行っている工夫(思考力・判断力・表現力の向上に向けた取り組み)

・「これは何なのか」「どうしてこんなものを考えるのか」「なぜそんなことがわかるのか」といった、
現代の学生がとかく軽視しがちな理屈もしくはストーリー部分を、腹の底から納得できるように丁寧に解説している。
・例や例題を可能な限り多く紹介し、実践的な理解が深まるように配慮している。
・学生自身が手を動かして演習問題を考えることができる時間をとるように心がけている。

成績評価方法

<試験により評価する>
1)形成的評価
 a) 知識:演習問題の解答を授業内で発表するとか、質問(するのと答えるのと両方)、WebClassへの詳細な解説記事の掲載などを通じて主体的に考えることを促す。
2)総括的評価
 a) 知識:基本的には定期試験(100%)で評価するが、(可能なら)授業時間内の演習問題の解答発表や(自主的な)レポートの提出などは勘案する。

教科書

片野修一郎 『統計学の基礎』(ムイスリ出版)
現在執筆中の第2版用に準備した原稿もWebClassにアップして適宜使います。

参考書

統計初歩の教科書はどれも大同小異です。必要なら適宜紹介します。高等学校数学Bの教科書にも、本講義の目的である推測統計学の初歩が解説されているようです。数学Bの教科書を持っている人はぜひ参考にするとよい。

オフィスアワー

毎週火曜午後に学習相談の時間が設定してありますが、それとは関係なく、質問は1105研究室にていつでも受け付けます。予約と遠慮は不要。

所属教室

薬学教育推進センター1105

準備学習(予習・復習等)

特定の分野を前提とするというより、中学・高校・大学1年で学んできた数学全般の基礎学力がものをいいます。以下の項目については常識的に知っていること、慣れていることを要請します。
・高等学校で学んだ確率の基本事項
・関数概念、和記号Σ、数式の計算などの基本的な数学の運用能力
・微積分で学んだこと。特に自然対数eを底とする指数関数や、定積分が面積を表すこと
もうひとつ、極めて重要なことがあります。たとえば微積分で、sin x の微分が cos x だというのは、意味を全く理解していなくても、禅問答のように覚えてしまえば正しく答えることができます。小学校低学年生でも答えられます。大学の勉強とは、このような1問1答の短いクイズに正しく答えられるように訓練することではありません。統計学においては、統計的な解析を待っている現実があり、先ずその状況を理解して、どのように統計的な手法を適用するかを考えなければなりません。従って、この授業の特に後半では、皆さんは常にある程度長い状況説明の文章を読まなければならなくなります。SNSに代表されるスラング的な短文のやり取りに浸りがちな日本の若者の読解力欠如が漸く最近になって本格的に危惧されるようになってきましたが、皆さんは大丈夫ですか。そういう意味で、この授業を、文章をきちんと正確に読むための訓練の場としても利用して欲しいと思っています。また、準備として高等学校数学Bの教科書を予め読んでおくこともよいかもしれません。

学生へのフィードバック

重要な内容に関しては、典型的な演習問題を事前に配布し、時間的余裕があれば(交代でも対面授業が可能なら)それを黒板に書いて発表してもらい、その解答について解説や添削をする。時間的余裕がない場合も、できるだけ典型的問題の演習と解説を実施することでフィードバックとしたい。

教員からの一言

統計学を組織的に学ぶのは生まれて初めてという人が殆どでしょう。「統計」という言葉から世間の大多数の人は、データを表やグラフにしてまとめる、という程度の認識しか連想しないと思われますが、当講義の主目的である推測統計学はそれらとは違う世界の、数学に基づく数理統計学が基礎になったそれなりに高度な学問です。しかし、数学という強力な学問を基礎にしているからこそ、複雑なデータを分析するための極めて強力な武器になります。
昨今、ビッグデータだのAIだのを当然のことのように吹聴する輩が跋扈し、まるでPCさえ使えれば何でもできるかのような風潮が醸成されていますが、とんでもないことです。統計学は数学(確率論)の上にその礎が築かれているにも拘わらず、日本では先進各国に比して飛び抜けて数学嫌い・無関心の人間が多く、その実態は改善されるどころかますます亢進しているように僕には見えます。「これからは統計の時代だ」というのなら、それに続く言葉は「だから基礎となる数学の力をつけなければならない」であるはずです。しかし、小中高における数学の学習現場の実情は、「試験に出る」と言われた問題の表面的な解き方だけを覚えて臨み、試験が終われば何も残らない、これの繰り返しになっていると思われます。勉強ではなく「試験のための姑息な対策勉強」になってしまっているわけです。根本を理解していないから全部すっからかんに忘れてしまうのは当然です。これでは統計学はわからない。永遠にわかりません。このことを皆さんにはしっかりと頭に刻みつけてほしいと思います。

備考

現在は表計算ソフトExcelや統計ソフトRにより、煩瑣な統計計算は簡単にできるようになっています。それらを用いた実習授業を取り入れることも考えたのですが、人数的に無理があって断念しました。代わりに関数電卓または普通の電卓(ただしルートの計算ができるもの)を持ってきてもらうといいですね。関数電卓は使いこなせれば非常に便利ですが、ただ持っているだけで使い方のわからない人を多く見かけます。宝の持ち腐れですよ。前期試験では電卓を使わないと計算できない問題ばかりが出題されますから、メモリー計算には今のうちから慣れておくといいです。

ナンバリングコード

RA2101

授業計画の見方・注意

①行動目標(内容)

…科目毎に設定された本学独自の行動目標が記載されている。

②行動目標(コアカリとの関連コード)

…本学の行動目標とモデル・コアカリキュラムとの関連をコード化して記載している。
 コードの具体的な内容は、画面右上の「コアカリとの関連コード一覧」をクリックすると確認することができる。

授業計画の見方・注意の見本シラバス

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