薬学部シラバス2024

感染制御学
Infection Control Science

 3年 前期 3年必修科目 1単位
中南 秀将

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学習目標(GIO)

感染症は微生物が人(宿主)に定着・侵入することによって発症し、その原因微生物の伝播によって拡大する疾患である。さらに、易感染性宿主の増加や生活環境の変化が、新たな感染症の流行や薬剤耐性菌の出現につながり、感染症の治療が難しくなっている。そのため、感染症治療薬の適正使用が重要となっている。本講義は、薬剤師として感染症治療に必要な基本知識に加え、変化する感染症に対応できる能力の習得を目指している。

行動目標(SBOs)

番号 内容 コアカリとの関連コード
1 細菌感染症に関係する代表的な生物学的製剤(ワクチン等)を挙げ、その作用機序を説明できる。 E2-7-1-2
2 代表的な微生物検査の検査項目を列挙し、目的と異常所見を説明できる。 E1-2-2-7
3 以下の呼吸器感染症について、病態(病態生理、症状等)、感染経路と予防方法および薬物治療(医薬品の選択等)を説明できる。
上気道炎(かぜ症候群(大部分がウイルス感染症)を含む)、気管支炎、扁桃炎、細菌性肺炎、肺結核、レジオネラ感染症、百日咳、マイコプラズマ肺炎
E2-7-3-1
4 以下の消化器感染症について、病態(病態生理、症状等)および薬物治療(医薬品の選択等)を説明できる。
急性虫垂炎、胆のう炎、胆管炎、病原性大腸菌感染症、食中毒、ヘリコバクター・ピロリ感染症、赤痢、コレラ、腸チフス、パラチフス、偽膜性大腸炎
E2-7-3-2
5 以下の感覚器感染症について、病態(病態生理、症状等)および薬物治療(医薬品の選択等)を説明できる。
副鼻腔炎、中耳炎、結膜炎
E2-7-3-3
6 以下の尿路感染症について、病態(病態生理、症状等)および薬物治療(医薬品の選択等)を説明できる。
腎盂腎炎、膀胱炎、尿道炎
E2-7-3-4
7 以下の性感染症について、病態(病態生理、症状等)、予防方法および薬物治療(医薬品の選択等)を説明できる。
梅毒、淋病、クラミジア症等
E2-7-3-5
8 脳炎、髄膜炎について、病態(病態生理、症状等)および薬物治療(医薬品の選択等)を説明できる。 E2-7-3-6
9 以下の皮膚細菌感染症について、病態(病態生理、症状等)および薬物治療(医薬品の選択等)を説明できる。
伝染性膿痂疹、丹毒、せつ、毛のう炎、ハンセン病
E2-7-3-7
10 以下の薬剤耐性菌による院内感染について、感染経路と予防方法、病態(病態生理、症状等)および薬物治療(医薬品の選択等)を説明できる。
MRSA、VRE、セラチア、緑膿菌等
E2-7-2-1 E2-7-3-9
11 以下の全身性細菌感染症について、病態(病態生理、症状等)、感染経路と予防方法および薬物治療(医薬品の選択等)を説明できる。
ジフテリア、劇症型A 群β溶血性連鎖球菌感染症、新生児B 群連鎖球菌感染症、破傷風、敗血症
E2-7-3-10
12 ヘルペスウイルス感染症(単純ヘルペス、水痘・帯状疱疹)について、治療薬の薬理(薬理作用、機序、主な副作用)、予防方法および病態(病態生理、症状等)・薬物治療(医薬品の選択等)を説明できる。 E2-7-4-1
13 サイトメガロウイルス感染症について、治療薬の薬理(薬理作用、機序、主な副作用)、および病態(病態生理、症状等)・薬物治療(医薬品の選択等)を説明できる。 E2-7-4-2
14 インフルエンザについて、治療薬の薬理(薬理作用、機序、主な副作用)、感染経路と予防方法および病態(病態生理、症状等)・薬物治療(医薬品の選択等)を説明できる。 E2-7-4-3
15 ウイルス性肝炎(HAV、HBV、HCV)について、治療薬の薬理(薬理作用、機序、主な副作用)、感染経路と予防方法および病態(病態生理(急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝細胞がん)、症状等)・薬物治療(医薬品の選択等)を説明できる。 E2-7-4-4
16 後天性免疫不全症候群(AIDS)について、治療薬の薬理(薬理作用、機序、主な副作用)、感染経路と予防方法および病態(病態生理、症状等)・薬物治療(医薬品の選択等)を説明できる。 E2-7-4-5
17 以下のウイルス感染症(プリオン病を含む)について、感染経路と予防方法および病態(病態生理、症状等)・薬物治療(医薬品の選択等)を説明できる。
伝染性紅斑(リンゴ病)、手足口病、伝染性単核球症、突発性発疹、咽頭結膜熱、ウイルス性下痢症、麻疹、風疹、流行性耳下腺炎、風邪症候群、Creutzfeldt-Jakob(クロイツフェルト-ヤコブ)病
E2-7-4-6
18 抗真菌薬の薬理(薬理作用、機序、主な副作用)および臨床適用を説明できる。 E2-7-5-1
19 以下の真菌感染症について、病態(病態生理、症状等)・薬物治療(医薬品の選択等)を説明できる。
皮膚真菌症、カンジダ症、ニューモシスチス肺炎、肺アスペルギルス症、クリプトコックス症
E2-7-5-2
20 以下の原虫感染症について、治療薬の薬理(薬理作用、機序、主な副作用)、および病態(病態生理、症状等)・薬物治療(医薬品の選択等)を説明できる。
マラリア、トキソプラズマ症、トリコモナス症、アメーバ赤痢
E2-7-6-1
21 以下の寄生虫感染症について、治療薬の薬理(薬理作用、機序、主な副作用)、および病態(病態生理、症状等)・薬物治療(医薬品の選択等)を説明できる。
回虫症、蟯虫症、アニサキス症
E2-7-6-2
22 病原微生物・悪性新生物が関わる疾患に用いられる代表的な薬物の基本構造と薬効(薬理・薬物動態)の関連を概説できる。 E2-7-10-1
23 ワクチンの原理と種類(生ワクチン、不活化ワクチン、トキソイド、混合ワクチンなど)について説明できる。 C8-2-2-1
24 現代における感染症(日和見感染、院内感染、新興感染症、再興感染症など)の特徴について説明できる。 D1-2-2-1
25 感染症法における、感染症とその分類について説明できる。 D1-2-2-2
26 代表的な性感染症を列挙し、その予防対策について説明できる。 D1-2-2-3
27 予防接種の意義と方法について説明できる。 D1-2-2-4
28 母子感染する代表的な疾患を列挙し、その予防対策について説明できる。 D1-2-4-2
29 滅菌、消毒および殺菌、静菌の概念を説明できる。 C8-3-5-1
30 主な滅菌法および消毒法について説明できる。 C8-3-5-2
31 感染の成立(感染源、感染経路、侵入門戸など)と共生(腸内細菌など)について説明できる。 C8-4-1-1
32 日和見感染と院内感染について説明できる。 C8-4-1-2
33 感染予防の基本的考え方とその方法が説明できる。 F-2-6-4
34 代表的な消毒薬の用途、使用濃度および調製時の注意点を説明できる。 F-2-6-6
35 院内での感染対策(予防、蔓延防止など)について具体的が提案ができる。 F-2-6-14
36 感染性心内膜炎、胸膜炎について、病態(病態生理、症状等)および薬物治療(医薬品の選択等)を説明できる。 E2-7-3-8

授業内容

回数 担当 内容 対応(SBOs)
1 中南 感染症総論
感染症法、新興再興感染症、感染経路と潜伏期、治療法、臨床検査、予防接種
1、2、23、24、25、27、31
2 感染症治療 総論
治療薬の副作用、相互作用、薬物動態、抗微生物薬の適正使用、PK/PD
3~22
3 感染症各論(1)
消化器系(肝炎を含む)、循環器系、腎・泌尿器系
4、6、36
4 感染症各論(2)
呼吸器、感覚器系、中枢系神経系(髄膜炎)
3、5、8
5 感染症各論(3)
皮膚・軟部組織、性感染症、母子感染症、その他
7、9、11、26、28
6 感染症各論(4)
グラム陽性菌感染症
2、3、5、8、9、10、11
7 感染症各論(5)
グラム陰性桿菌感染症
2、3、4、5、6、7
8 感染症各論(6)
グラム陰性桿菌、その他の細菌感染症
3、7、10
9 感染症各論(7)
DNAウイルス感染症(ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、突発性発疹、伝染性単核球症、咽頭結膜熱、ウイルス性下痢症)
12、13、15
10 感染症各論(8)
RNAウイルス感染症(インフルエンザ、伝染性紅斑(リンゴ病)、手足口病、麻疹、風疹、流行性耳下腺炎、風邪症候群、
14、15
11 感染症各論(9)
RNAウイルス感染症(レトロウイルス感染症)とプリオン
輸入感染症、国際協力
2、16、17
12 感染症各論(10)
真菌感染症、原虫・寄生虫感染症
2、18、19、20、21
13 感染制御
院内感染、薬剤耐性菌対策、感染症対策、サーベイランス、AST、ICT
29、30、32、33、34、35

アクティブ・ラーニングの取り組み

WebClassに講義資料および確認試験を掲示。
確認試験により、学修の到達レベルを確認させている。
講義中に、学生を指名し、質問について回答させている。

授業で行っている工夫(思考力・判断力・表現力の向上に向けた取り組み)

・新聞やTVニュース等で報道された最新の感染症情報や開発中の抗微生物薬や副作用情報などを、図表や写真・新聞記事を活用して、リアルタイムで講義に取り入れ、興味ある講義を心がけている。
・WebClassに、講義内容をまとめた図表を掲示し、学修しやすいようにしている。
・WebClassに確認問題を掲示し、学修の到達レベルが確認できるようにしている。

成績評価方法

<試験、レポート・課題により評価する>
1) 形成的評価
a) 知識:ペーパー試験に加え、WebClassの確認問題や口頭試問等にて評価する。
2) 総括的評価
a) 知識:定期試験(80%)、WebClassの確認問題(20%)等にて評価する。
3)成績評価の基準
S (90%以上):合格
A (80~89%):合格
B (70~79%):合格
C (60~69%):合格
D (60%未満):不合格
※再試験の成績・・・合格の場合 C
出席不良者(全講義の1/3以上の欠席)に対しては、定期試験の受験停止措置を講ずることがある。欠席や遅刻等で、適切な理由があるものは欠席届を提出すること。

教科書

基礎から臨床までカバーできる 薬系微生物学・感染症学(南江堂)

参考書

JAID/JSC感染症治療ガイド2019(日本感染症学会・日本化学療法学会)
抗菌薬虎の巻 改訂2版 (大曲貴夫・監修 南山堂)
グローバル感染症マニュアル(南江堂)
医科ウイルス学 改訂第3版(南江堂)
薬がみえる Vol.3(Medic Media)
感染症診療スタンダードマニュアル 第2版(羊土社)

オフィスアワー

いつでも可(臨床微生物学教室)

所属教室

中南 秀将 臨床微生物学教室 研究2号館6階

準備学習(予習・復習等)

・講義資料はWebClass上に掲示します。各自、ダウンロードし、持参してください。
・確認問題がWedClassに掲示されています。成績評価にも反映されますが、それ以外でも各自で、予習や復習に活用してください。

学生へのフィードバック

講義において、練習問題を提示して、解答と解説を行い、講義内容のフィードバックする。
最終の講義において、重要点を解説する。

教員からの一言

感染制御学は、病院にとどまらず、在宅においても重要になっています。また、感染症は福祉制度、公衆衛生、生活環境によって変わります。年によって、流行する感染症は異なります。これらの変化に対応できる薬剤師になれるように、講義だけに頼らず、視野を社会に広げてください。
常に、新しい情報を取得できるように心がけてください。
本講義は、知識よりも、感染症に対する考え方やその情報処理について学修できることを重点においています。

備考

ナンバリングコード

RC3104

授業計画の見方・注意

①行動目標(内容)

…科目毎に設定された本学独自の行動目標が記載されている。

②行動目標(コアカリとの関連コード)

…本学の行動目標とモデル・コアカリキュラムとの関連をコード化して記載している。
 コードの具体的な内容は、画面右上の「コアカリとの関連コード一覧」をクリックすると確認することができる。

授業計画の見方・注意の見本シラバス

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