薬学部シラバス2024
化学物質と生体影響
Chemical Substances and Biological Effects
3年 前期 3年必修科目 1単位 | |
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山折 大 西山 貴仁 |
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学習目標(GIO)
我々の身の回りには、栄養素や生体成分などの生体維持にとって不可欠な物質以外に、外来物質あるいは異物と呼ばれる多種多様な化学物質が存在している。例えば、医薬品、食品添加物、農薬、香粧品など、我々が意図的に創製した化学物質のみならず、非意図的に創り出された多くの環境汚染物質や天然物質などがある。これらの多種多様な異物は、飲食、呼吸、そして接触などにより体内に吸収された後に、各組織に分布し、代謝・排泄される。体内に吸収された異物の中には、未変化体のままで、あるいはさらに代謝を受けた代謝物として有害作用あるいは薬理作用を発現するものもある。このような多種多様な化学物質の生体への影響(特に有害作用)を知るために、化学物質の吸収、分布、代謝、排泄(ADME)の基本的プロセスについて学習する。さらに、慢性毒性として最大の脅威である化学発がんについて、代表的な発がん性物質を例示しながら、その発現機序について学ぶ。なお、食品や環境中に存在する化学物質の生体影響、毒性評価法ならびに安全性評価と適正使用については、3年後期の「化学物質の毒性と安全性」で詳しく学ぶ。
行動目標(SBOs)
番号 | 内容 | コアカリとの関連コード |
---|---|---|
1 | 代表的な有害化学物質の吸収の基本的なプロセスについて説明できる。 | D2-1-1-1 |
2 | 代表的な有害化学物質の分布の基本的なプロセスについて説明できる。 | D2-1-1-1 |
3 | 代表的な有害化学物質の排泄の基本的なプロセスについて説明できる。 | D2-1-1-1 |
4 | 代表的な有害化学物質の代謝の基本的なプロセスについて説明できる。 | D2-1-1-1 E4-1-4-1 |
5 | 代表的な薬物代謝酵素について概説できる。 | D2-1-1-1 E4-1-4-1 |
6 | 薬物代謝酵素が関わる代謝、代謝的活性化について概説できる。 | D2-1-1-1 D2-1-3-1 E4-1-4-2 |
7 | 薬物代謝酵素の阻害および誘導のメカニズムについて概説できる。 | D2-1-1-1 E4-1-4-5 |
8 | 発がんに至る過程(イニシエーション、プロモーションなど)について概説できる。 | D2-1-3-3 |
9 | 発がん性物質などの代謝的活性化の機構を列挙し、その反応機構を説明できる。 | D2-1-3-1 |
10 | 活性酸素による障害を防ぐための生体防御因子について具体例を挙げて説明できる。 | D2-1-1-4 |
授業内容
回数 | 担当 | 内容 | 対応(SBOs) |
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1 | 山折 | 有害化学物質の体内動態 | 1 |
2 | 〃 | 有害化学物質の体内動態 | 2 |
3 | 〃 | 有害化学物質の体内動態 | 3 |
4 | 〃 | 有害化学物質の体内動態 | 4 |
5 | 〃 | 有害化学物質の体内動態 | 4 |
6 | 〃 | 薬物代謝第I相酵素の種類と特徴 | 5,6 |
7 | 〃 | 薬物代謝第I相酵素の種類と特徴 | 5,6 |
8 | 〃 | 薬物代謝第II相酵素の種類と特徴 | 5,6 |
9 | 〃 | 薬物代謝酵素に影響を及ぼす因子 | 5 |
10 | 〃 | 薬物代謝酵素に影響を及ぼす因子 | 5,7 |
11 | 西山 | 化学物質による発がん | 8 |
12 | 〃 | 薬物代謝酵素による二次発がん物質の代謝的活性化 | 6,9 |
13 | 〃 | 活性酸素毒性と生体防御機構 | 10 |
アクティブ・ラーニングの取り組み
授業ごとに補助プリントを配布し、講義を進めながら空欄部分を記入させるようにしている。また、講義中に教科書へのマークや書き込みを促し、13回の講義終了後には教科書が学生個々人に適した「まとめの学習ノート」として仕上がるように仕向けている。
授業で行っている工夫(思考力・判断力・表現力の向上に向けた取り組み)
授業ごとに行動目標を伝え、さらに行動目標に関連するキーワードを提示している。教科書と講義内容の関連性が明確になるように示しながら講義を行い、予習・復習がしやすいように心がけている。パワーポイントを活用し、図を多く取り入れることによって化学物質の作用と生体が引き起こす様々な現象をイメージできるようにしている。また、化学物質を巡る社会的動向と関連づけて解説するなど、講義内容に興味が湧くような授業としている。
成績評価方法
<試験により評価する>
1) 形成的評価
a) 知識:WebClassに確認テストを出題し、繰り返しの知識の到達レベルを確認させている。
2) 総括的評価
a) 知識:定期試験(100%)で総合的に評価する。
S(90%以上): 合格
A(80~90%未満):合格
B(70~80%未満):合格
C(60~70%未満):合格
D(60%未満): 不合格
※再試験の成績・・合格の場合C
教科書
衛生薬学-健康の維持と増進をめざして- (早川磨紀男・藤原泰之・山折 大編著、京都廣川書店、2023年、ISBN 978-4-910844-09-1)
参考書
衛生化学詳解 第3版(大塚文徳著者代表、京都廣川書店、2020年、ISBN 978-4-909197-74-0)
最新 薬剤学 第11版(尾関哲也・井上勝央編集、廣川書店、2018年、ISBN 978-4-567-48027-7)
臨床薬物動態学-臨床薬理学・薬物療法の基礎として- 改訂第5版(加藤隆一監修、家入一郎・楠原洋之編集、南江堂、2017年、ISBN 978-4-524-25758-4)
オフィスアワー
山折 いつでも可。ただし、要事前連絡。薬物代謝分子毒性学教室 研究2号館4階 (408)(教授室)
西山 いつでも可。ただし、要事前連絡。薬物代謝分子毒性学教室 研究2号館4階 (408)(研究室1)
所属教室
山折 薬物代謝分子毒性学教室 教授
西山 薬物代謝分子毒性学教室 講師
準備学習(予習・復習等)
授業ごとに予習と復習を各々70分以上行ってください。
授業を受ける前に講義予定項目のSBOsを確認し、教科書の該当範囲を読んでから講義に臨んでください。また、講義後の復習を必ず行い、WebClassに出題された確認テストを解いてください。さらに、不明な箇所等については講義終了直後やオフィスアワーを活用して確認するようにしてください。
学生へのフィードバック
確認テスト解答後にWebClassにて解説を行う。特に、正答率の低い問題については講義内で解説する。
教員からの一言
医薬品、食品添加物、農薬、香粧品やその他工業用品など皆さんの生活を豊かにする化学物質が日々開発され、使用されています。しかしながら、それらのほとんどは人工的に化学合成されたものであり、その使用量、使用方法や、廃棄物としての処理法が不適切な場合には、重大な健康被害を及ぼすおそれがあります。皆さん一人ひとりの顔や性格が違うように、それら化学物質の構造や物理化学的性質、そして生体に対する影響も様々です。この講義を受講すれば、化学物質の毒性について予測することが可能となり、様々な化学物質による有害作用を回避し、適正に使用できるようになります。薬学部ならではの内容ですので、しっかり勉強してください。
備考
実務家教員担当科目
ナンバリングコード
RD3101