薬学部シラバス2024
薬物送達学
Drug Delivery System
3年 後期 3年必修科目 1単位 | |
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根岸 洋一 髙橋 葉子 |
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学習目標(GIO)
薬物送達システム(Drug Delivery System: DDS)は、薬物の体内動態を精密に制御し、「望ましい濃度-時間パターン」かつ「選択的」に薬物を標的臓器へ送り込むことによって、治療の最適化を目指す新しい薬物投与システムである。本講義では、医薬品開発におけるDDS技術とその意義について、最近の研究例やトピックスを交えて講義する。
行動目標(SBOs)
番号 | 内容 | コアカリとの関連コード |
---|---|---|
1 | 従来の医薬品製剤の有効性、安全性、信頼性における主な問題点を列挙できる。 | E5-3-1-1~2 |
2 | DDSの概念と有用性について説明できる。 | E5-3-1-1~2 |
3 | 放出制御の概要と意義について説明できる。 | E5-3-2-1 |
4 | 投与部位ごとに、代表的な放出制御型製剤(徐放性製剤を含む)を列挙し、その利点について説明できる。 | E5-2-1-2 E5-3-2-2~3 |
5 | 代表的な徐放性製剤における徐放化の手段について説明できる。 | E5-2-1-2 E5-3-2-2~3 |
6 | 利便性製剤へのDDS技術の適用例を挙げ、その特徴について説明できる。 | E5-3-1-2 E5-3-2-3 E5-3-4-3 |
7 | 製剤化で汎用される高分子の構造を理解し、その物性について説明できる。 | E5-1-4-1 |
8 | 標的指向化の概要と意義について説明できる。 | E5-3-3-1 |
9 | 代表的な標的指向型製剤を列挙し、その利点について説明できる。 | E5-3-3-1~3 |
10 | 代表的な核酸・遺伝子医薬の特徴と利点について説明できる。 | E5-3-3-1,3 |
11 | 代表的な抗体医薬の特徴と利点について説明できる。 | E5-3-3-1,3 |
12 | 代表的なDDS技術の導入が必要な疾患と薬物を列挙することができる。 | E5-3-3-1~3 |
13 | 代表的なドラッグキャリアを列挙し、そのメカニズムを説明できる。 | E5-1-4-1 E5-3-3-1~3 |
14 | 代表的なプロドラッグを列挙し、そのメカニズムと有用性について説明できる。 | E4-1-4-4 E5-3-4-1~3 |
15 | 吸収改善の概要と意義について説明できる。 | E5-3-4-1 |
16 | 代表的な吸収改善技術を適用した代表的な医薬品を列挙し、その特徴について説明できる。 | E5-1-3-1 E5-1-4-1 E5-3-4-1~3 |
17 | 製剤の特性(適用部位、製剤からの薬物の放出性など)を理解した上で、生物学的同等性について説明できる。 | E5-2-3-1 |
授業内容
回数 | 担当 | 内容 | 対応(SBOs) |
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1 | 根岸、髙橋 | 序論、放出制御型製剤(原理と意義) | 1-3 |
2 | 根岸、髙橋 | 経口投与型放出制御製剤 1(徐放性製剤の構造・材料と特徴) | 3-6 |
3 | 根岸、髙橋 | 経口投与型放出制御製剤 2 (薬物放出機構、薬物動態との関係) | 3-5,17 |
4 | 根岸、髙橋 | 非経口放出制御製剤 1 (経皮型,粘膜投与型) | 3-6,12,17 |
5 | 根岸、髙橋 | 非経口放出制御製剤 2 (経肺投与型、注入型) | 3-6,12,17 |
6 | 根岸、髙橋 | 標的指向型製剤(原理と意義) | 7,8 |
7 | 根岸、髙橋 | 標的指向型製剤 1(微粒子製剤) | 7,9,12,14,17 |
8 | 根岸、髙橋 | 標的指向型製剤 2(核酸・遺伝子医薬等) | 7,9,10,12,13 |
9 | 根岸、髙橋 | 標的指向型製剤 3(抗体医薬・高分子医薬等) | 7,9,11,12,13,17 |
10 | 根岸、髙橋 | プロドラッグ | 12,14 |
11 | 根岸、髙橋 | 吸収改善 1(経口投与、経皮投与) | 12,15,16,17 |
12 | 根岸、髙橋 | 吸収改善 2(その他の投与経路) | 12,15,16,17 |
13 | 根岸、髙橋 | 総合演習 | 1-17 |
アクティブ・ラーニングの取り組み
1. 講義を進行しながら、テキスト内の空欄部分を記入させるようにしている。
2. 講義内またはWebClassに、課題として演習問題(薬剤師国家試験問題等)を提示し、常に理解度チェックを行うようにさせている。
授業で行っている工夫(思考力・判断力・表現力の向上に向けた取り組み)
1. あらかじめ目標とするキーワードを提示し、目標を明確にしている。
2. 講義のはじめに必ず5-10分程度、前回の重要ポイントを復習し、学習効果の向上に努めている。
3. テキストの書き込みのチャンスを増やし、講義に集中できる工夫をしている。
4. 開発されたDDS製剤が、どのような薬物治療における課題解決とアドヒアランス向上につながっているかを説明している。
5. 医薬品開発の現状・課題と今後のDDS開発の重要性について問題提起している。
6. DDSに興味を持ってもらうように先端のDDS研究開発についても紹介している。
成績評価方法
<試験により評価する>
1) 形成的評価
a) 知識: 項目ごとに理解度チェックテストを行い、知識の到達レベルを確認している。
2) 総括的評価
a) 知識: 定期試験によって評価する(100%)。不合格者には再試験を1回行う。追試験者への再試験は実施しない。
出席不良の学生には単位認定をおこなわない。受講者には全出席を前提とする。ただしやむを得ず欠席した場合には、欠席届に理由証明書等を添付して、1週間以内に提出する。不備がある場合には欠席届を受理しない。
教科書
薬物送達学テキスト 2024年度版(WebClass)
参考書
図解で学ぶDDS(橋田監修、高倉編 じほう)
The DDS 薬学が語るDDSの世界 (米谷編 京都廣川書店)
最新薬剤学(第11版)(尾関、井上、廣川書店)
薬学DDS(岡本編 京都廣川書店)
オフィスアワー
在室の時はいつでも可。ただし、予めメールにて連絡を入れること。
所属教室
根岸 薬物送達学教室 研究棟1号館3階
髙橋(葉) 薬物送達学教室 研究棟1号館3階
準備学習(予習・復習等)
本科目の理解には、2年次科目「物理薬剤学」、3年次科目「製剤設計学」と「生物薬剤学」の知識が基礎となるため、良く復習しておくこと。
学生へのフィードバック
授業内に理解度チェックテストを行い、理解度が低かった内容に関して捕捉説明を行っている。
授業後にアンケートを毎回とり、わかりにくかったところを、次の授業内でフィードバックしている。
教員からの一言
患者のアドヒアランス向上には、薬物自身の開発のみならず、薬物治療の最適化を達成するためのDDS技術が必要不可欠です。特に難治性疾患治療(がん、中枢神経系疾患、遺伝病など)分野では、その技術開発が活発化しています。本講義の知識は、実践的な医療薬学全般、先端医療分野に直結しますので、興味を持って理解を深めるようにしていきましょう。
備考
ナンバリングコード
RE3201