薬学部シラバス2024
病態栄養管理学
Pathologic Nutrition
4年 前期 4年必修科目 1単位 | |
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下枝 貞彦、川口 崇、平田 尚人、 |
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学習目標(GIO)
医療の高度化が急速に進み、薬剤師においても専門性が求められている。病院や薬局など臨床現場で業務に従事する薬剤師は、自己研鑽を積むことによって多様な分野で専門薬剤師の資格取得を進めている。本講義は、栄養管理に対する専門薬剤師取得に必要な知識や技術の概略を解説し、将来臨床現場で活躍する薬剤師を目指す学生の専門分野を明確にすることを目的とする。
行動目標(SBOs)
番号 | 内容 | コアカリとの関連コード |
---|---|---|
1 | 五大栄養素を列挙し、それぞれの役割について説明できる。 | D1-3-1-1 |
2 | 各栄養素の消化、吸収、代謝のプロセスを概説できる。 | D1-3-1-2 |
3 | 食品中の三大栄養素の栄養的な価値を説明できる。 | D1-3-1-3 |
4 | 五大栄養素以外の食品成分(食物繊維、抗酸化物質など)の機能について説明できる。 | D1-3-1-4 |
5 | エネルギー代謝に関わる基礎代謝量、呼吸商、推定エネルギー必要量の意味を説明できる。 | D1-3-1-5 |
6 | 日本人の食事摂取基準について説明できる。 | D1-3-1-6 |
7 | 栄養素の過不足による主な疾病を列挙し、説明できる。 | D1-3-1-7 |
8 | 疾病治療における栄養の重要性を説明できる。 | D1-3-1-8 |
9 | 代表的な疾患における薬物治療、食事療法、その他の非薬物治療(外科手術など)の位置づけを説明できる | E1-3-1-1 |
10 | 栄養状態の異なる患者(肥満、低アルブミン血症、腹水など)における薬物動態と、薬物治療で注意すべき点を説明できる。 | E3-3-4-3 |
11 | 栄養療法に関わる基本的な医療用語、略語の意味を説明できる。 | F-3-1-1 |
12 | 患者および種々の情報源(診療録、薬歴・指導記録、看護記録、お薬手帳、持参薬等)から、栄養療法に必要な情報を収集できる。(技能・態度) | F-3-1-2 |
13 | 身体所見の観察・測定(フィジカルアセスメント)の目的と得られた所見の栄養学的管理への活用について説明できる。 | F-3-1-3 |
14 | 基本的な身体所見を観察・測定し、栄養状態の評価できる。 | F-3-1-4 |
15 | 代表的な疾患に対して、疾患の重症度等に応じて科学的根拠に基づいた輸液処方設計ができる。 | F-3-3-1 |
16 | 病態(肝・腎障害など)や生理的特性(妊婦・授乳婦、小児、高齢者など)等を考慮し、輸液の選択や用法・用量設定を立案できる。 | F-3-3-2 |
17 | 皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射・点滴等の基本的な手技を説明できる。 | F-3-3-4 |
18 | 代表的な輸液の種類と適応を説明できる。 | F-3-3-5 |
19 | 患者の栄養状態や体液量、電解質の過不足などが評価できる。 | F-3-3-6 |
20 | 代表的な疾患に用いられる輸液の効果、副作用に関してモニタリングすべき症状と検査所見等を具体的に説明できる。 | F-3-4-1 |
21 | 栄養サポートチームの目的と構成、構成員の役割を説明できる。 | F-4-1-2 |
22 | 在宅患者の病状(症状、疾患と重症度、栄養状態等)とその変化、生活環境等の情報収集を行うことができる。 | F-5-1-6 |
授業内容
回数 | 担当 | 内容 | 対応(SBOs) |
---|---|---|---|
1 | 平田 | 輸液とは 細胞外と細胞内の水の移動を理解する 2種類の等張液を知る 輸液製剤は全て生理食塩液と5%ブドウ糖から成り立っている 点滴されている輸液を見て薬剤師・薬学生としてのかかわり方を知る 栄養輸液は維持薬である 膠質輸液について |
8,11,18 |
2 | 〃 | 輸液の処方設計 栄養サポート シナリオ 処方設計における計算の流れ TPN開始処方は? 処方設計の逆が鑑査である TPN開始処方が決まったら |
9,12,13,14 |
3 | 〃 | 5大栄養素① 脂質 アミノ酸 糖質 微量元素 ビタミン |
1,2,3,4 |
4 | 下枝 | 5大栄養素② 脂質 アミノ酸 糖質 微量元素 ビタミン |
19,20 |
5 | 〃 | 輸液モニタリング 高血糖(投与速度、glycation、脱水、意識障害) 低血糖(意識障害、投与速度、脳・赤血球) 必須脂肪酸欠乏症(皮膚症状、エイコサノイド) 肝機能異常(ALT>AST、脂肪肝) 腎機能異常(NPC/N,BUN,Cr,腎前性腎不全) 水・電解質(投与量、GIK) 微量元素欠乏・過剰症(微量元素製剤の弱点、Mn) ウエルニッケ脳症・乳酸アシドーシズ(bビタミンB1不足) 浮腫・肺水腫(スターリングの仮設) リフィーディング症候群(急速過剰栄養) 酸・塩基平衡異常(ブドウ糖、CO2,滴定酸度) |
17,21 |
6 | 〃 | リスクマネジメント TPN製剤の組成を理解する キット製剤の構造を理解する |
12,13,21,22 |
7 | 平田 | 処方鑑査① 処方設計と処方鑑査 |
18 |
8 | 川口 | 水、電解質輸液の基本 | 19,20 |
9 | 〃 | 水・電解質異常(水分・Naの異常) | 19,20 |
10 | 〃 | 水・電解質異常(Kの異常) 水、電解質の欠乏量輸液の考え方 |
10,20 |
11 | 〃 | 水・電解質異常(酸・塩基平衡の異常) | 5,6,7 |
12 | 下枝 | 経腸栄養剤 経腸栄養の特徴 経腸栄養の適応 経腸栄養の禁忌 投与方法の比較 経腸栄養法の利点 各経腸栄養製剤 |
10,15,16 |
13 | 平田 | 処方鑑査② 演習問題 |
18 |
アクティブ・ラーニングの取り組み
各回に補助プリントを配布し,講義を進行しながら,空欄部分を記入させるようにしている。教科書にある練習問題を実際に解き、解説を加えている。
各回に学生を指名して発表させている。
授業で行っている工夫(思考力・判断力・表現力の向上に向けた取り組み)
具体的な症例や事例を示すことで、考える力を養うための手法が学習できる。
成績評価方法
<試験により評価する>
1)形成的評価
知識:課題、演習問題を行う。解説にてフィードバックする。
2)総括的評価
知識:定期試験(授業内)にての結果に基づいて評価する(100%)。必要に応じて追再試験を1回実施する。 但し、受講態度によっては受験資格を失うことがある。
教科書
教科書は「薬学輸液療法 京都廣川書店」を使用する。
講義資料を用いることもある。講義資料はWebClassより各自で印刷し、講義時に持参すること。なお講義資料がある場合は、原則として講義前日の18時を目途にWebClass上で公開される。
参考書
病態栄養認定管理栄養士のための病態栄養ガイドブック(改訂第7版) 南江堂
別冊「医学のあゆみ」 病態栄養学UPDATE 医歯薬出版
認定NSTガイドブック 2023 改訂第6版 南江堂
日本臨床栄養代謝学会 JSPENテキストブック 南江堂
よくわかる輸液療法のすべて 改定第2版 永井書店
やさしく学ぶための輸液・栄養の第一歩 日本静脈経腸栄養学会 非売品
レジデントノート 17(3):2015 水・電解質の異常にどう対処する? 羊土社
より理解を深める体液電解質異常と輸液 改訂3版 中外医学社
オフィスアワー
下枝 貞彦:火曜日以外はいつでも可。但し、メール(shimoeda@toyaku.ac.jp)による予約が必要。
川口 崇:いつでも可。ただし要予約。
平田 尚人:水曜日以外はいつでも可。但し、メールによる予約が必要。
所属教室
下枝 貞彦 臨床薬剤学教室 教授 医療薬学研究棟2階 M207号室
川口 崇 医療実務薬学教室 教授 ドラッグラショナル(DR)研究開発センター 3階 D301号室
平田 尚人 臨床薬剤学教室 准教授 医療薬学研究棟2階 M206号室
準備学習(予習・復習等)
70分の授業ごとに予習と復習を各々70分以上行うこと。授業を受ける前に講義予定項目のSBOを確認し,テキスト(プリント)の該当範囲を読んでから講義に臨むこと。また講義の後は必ず復習し、判らないことはそのまま放置せずに、参考書等で調べ理解を深める必要がある。自分で調べることがとても重要であるが、それでも理解できなければ、オフィスアワーや次回の講義時に教員に質問すること。
なお、講義で用いる資料については原則として講義前日の18時までに WebClassにアップするので、受講者各自で印刷し資料に目を通してから講義に臨むこと。
学生へのフィードバック
講義内容等に対する質問等は随時回答する。各講義の終了時にその日に行った講義内容のポイントを講義中に用いた資料を振り返りながら復習する。また、講義開始時においても前回の講義内容を冒頭で復習して、その日の講義につなげる工夫をしていく。
さらに定期試験の模範解答を提示し、学生自ら理解不足であった箇所を振り返ることができるようにする。
教員からの一言
高齢社会を迎え、糖尿病、腎臓病などの複数疾患を抱える高齢者の増加やフレイル、サルコペニアなど全身的栄養管理が重要となっている。疾患の病態解明や治療・予防医療、介護分野において栄養学の重要性が増し、病態栄養学に精通した薬剤師が医師、管理栄養士などの他職種と連携し、様々な疾患の栄養療法について科学的根拠に基づいたテーラーメイド治療を実践することが求められている。
今後、本分野における薬剤師の役割が、保険薬局を中心に益々重要になることは明白である。
備考
実務家教員担当科目
ナンバリングコード
RF4103